令和5年10月1日よりインボイス制度が開始され、どんなものでも適格請求書をもらわなくてはならないと不安を感じている方も少なくないと思います。消費税の仕入税額控除を受けるためには、原則全ての取引においてインボイスの交付を受けなければなりません。
しかし現実的に交付を受けるのが困難な取引も存在することから、次の取引は適格請求書(インボイス)の交付義務が免除されており、それらを支払った場合は、インボイスの交付を受けなくても帳簿に記録を残すなどの要件を満たすことにより、仕入税額控除を受ける事ができます。
- 〈公共交通機関特例〉電車、バス、モノレール、船舶などの公共交通機関による3万円未満の旅客の運送
3万円未満の判定の基準は、1回の取引金額が税込3万円未満かどうかで判定されます。例えば新幹線代金が一人税込16,000円だった場合、一人で1枚購入した場合は3万円未満なのでインボイスの交付を受ける必要はありませんが、二人分以上を一度に購入した場合は税込金額が3万円以上となるため、インボイスの交付を受ける必要があります。
なお、特急料金や寝台料金は旅客の運送に直接的に附帯するものとして、3万円未満の判定の対象となりますが、入場料金や手回品(動物など)料金は旅客の運送に直接的に附帯するものではないものとして、インボイスの交付を受ける必要があります。
- 出荷者から委託を受けた受託者が卸売市場において行う生鮮食料品の販売
対象となる卸売市場が農林水産大臣の認定を受けた中央卸売市場、都道府県知事の認定を受けた地方卸売市場、その他上記に準ずる卸売市場となっており、かつ、販売の委託を受けている者から購入した生鮮食料品に限り、一定の書類を保存することで仕入税額控除を受ける事ができます。
- 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)
農家などの生産者が農協等に対し、出荷した農林水産物について、売値、出荷時期、出荷先等の条件を付けずに販売を委託(無条件委託方式)し、かつ、一定の期間における農林水産物の販売金額が種類、品質、等級などの区分ごとに平均した価格で算出(共同計算方式)した金額を基礎に定められたもので、生産者が特定されない農林水産物を購入した場合はインボイスの交付を受ける必要なく、農協等が作成する一定の書類を保存することで仕入税額控除を受けることができます。
- 〈自動販売機特例〉自動販売機及び自動サービス機により行われ3万円未満の商品の販売等
代金の支払と、物品の購入やサービスの提供がその機械装置のみで完結するもので、飲食料品の自動販売機はもちろん、コインロッカー、コインランドリー、ATMの使用手数料などが該当し、帳簿に記録を付けておくことで仕入税額控除を受けることができます。
ただし、コインパーキングや、飲食店の券売機のように代金を支払って、発券などはされるものの、サービスの提供や飲食物の提供が別途行われるものは自動販売機特例の対象にはならないため、適格請求書(インボイス)の発行を受ける必要があります。
また、ネットバンキングは自動販売機特例の対象とはなっていないため、振込手数料の仕入税額控除を受けるために適格請求書の要件を満たす振込画面を保存する必要などが出てくると考えられます。
- 郵便ポストに差し出した郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス
切手は、購入した際には消費税が非課税扱いとされており、使用をした時に消費税の課税扱いになるものですが、その使用の度にインボイスの交付を受けることは現実的ではないためと考えられます。
殆どの事業者が該当するものは1.4.5.かと思いますが、4.で少し触れた振込手数料の扱いについては、再度改めてご説明させていただきます。